「刀に認められし者」(後編) 扉を開けると共に店内にいた従業員がいっせいに声をあげた。 「うわぁ〜、ものすっごい活気やなぁ〜…。」 セシルが店内の様子に驚いているとオーナーのレイヴンが声をかけてきた。 「いらっしゃいませ、あ、あの時の…。」 「あ、あの時はスンマセン、それにしても凄い店やなぁ…、びっくりして腰抜かしそうになったわ(笑)」 「ふふ…有り難う御座います、えっと…姉様はまだ来ていませんけど…。」 「ぬ、じゃあ来るまでなにか飲ましてもらおうかな。」 「はいな、カウンター席でよろしいですか?」 「あいよ〜。」 セシルはアークがまだ来てないことを少々がっかり思ったが、酒が入るとあまり気にしなくなっていた。 ー1時間後ー 客も少し少なくなり、静かになった店内。 セシルも今日のところは諦めるかと席を立ち上がろうとすると。 「遅れてごめんなさいね、ちょっと用事があって。」 「はいな、あ、姉様にお客様ですよ。」 「あら、長く待たせてごめんなさい。」 アークは眼帯をしていて、髪の色は銀髪、そして息を飲むほどの美しさであった。 セシルはしばらく見とれていると。 「セシルさん?セシルさ〜ん?」 レイヴンがセシルの前で手を振ると、やっとセシルが我に返った。 「あ?あぁ、スンマセン、いや、あまりに綺麗なもんで見とれてしもうたわ。」 「あら、嬉しいお言葉有り難う(微笑)」 「あっと、本題にうつらな…、アークさん、これに見覚えはあるかい?」 セシルは腰から刀を抜いてカウンターに置いた。 「ね、姉様、これ…。」 「そう、アナタが…。」 「知ってるんか?」 「えぇ、前にお客様から聞いたことがあるわ、オロチアギトをもう一本持ってる者がいるって話をね。」 「なるほど…、で、ここは客と話すだけじゃなくて、ラグオルに一緒に降りたり依頼を引き受けてくれるって聞いてるんやけど。」 「えぇ、だけど内容によっては引き受けられない物もあるわ。」 「ふむ、じゃあ依頼を頼んでもええかな。」 「わかりました、内容は?」 「オロチアギトの所有者、アークとの対決。」 そう言い放った時、店内の従業員と客がいっせいにセシルに目をやった。 「それは、バトルという類かしら?」 「そうなるんかなぁ、あぁ、あと武器はオロチアギトのみで頼んますよ。」 「えぇ、手加減無しでいいわね?」 「そうこなくっちゃ、けど今日は遅いし、明日の昼過ぎ、遺跡の広場で。」 「遺跡…!?」 「あぁ、敵は全部倒しておくさかい、安心してな。」 「そ、そう…それならいいけど…。」 「それじゃあ今日は帰るわ、代金はここに置いとくよ。」 そう言ってセシルは店を出ていった。 セシルがいなくなってもしばらくの間店内には驚きの渦が回っていた。 ー次の日ー アークは指定された場所に着いた、その時セシルはすでに来ており、あたりにはエネミーの血痕が点々とついていた。 「おっ、来たか、丁度敵も一掃したし、いいタイミングで来たわ。」 「昨日言った通りに敵を一掃してあるわね、感心したわ。」 「そうやろうなぁ、俺の性格こんなんやし、そう思われても仕方ないなぁ(笑)」 そう笑いながらセシルは腰のオロチアギトに手を伸ばし、引き抜いた。 「さぁ、構えてもらおうか。」 「戦闘になると随分性格が変わるのね。」 「そうであろうな、皆からもよく言われる。」 「そういう人、ウチに一人欲しいわね。」 「ノーチェで働くのも悪くないな、さて、始めようか…!」 セシルはそう言い放つと同時に一気に走り出した。 アークもほぼ同時に走り出したが、その時。 両者の背後で空間の捻れが出来たと共にそこからエネミーが出てきた。 「なにっ!」 「やっぱり…。」 二人はそのまま走りながら横にずれ、エネミーを斬り倒した。 「すべて倒したはずなのに…。」 「遺跡にはまだまだ秘密があるわ、油断してると死に直面することだってあるわ。」 「ふむ、肝に命じておこう。」 「さて、次が来たわよ。」 二人は刀を構えると出てきたエネミーを次々と斬り倒していった。 だが、アークが他のエネミーに気を取られていると背後からインディベルラの手が飛んできた。 「危ない!」 セシルが叫んだが時すでに遅し、ベルラの手はアークに命中し、壁際に飛ばされていった。 セシルが駆け寄ろうとしたがセシルにもベルラの手が命中し、壁際に飛ばされていった。 「ここで終わるか…。」 セシルがそう呟いたその時。 「レスタ!」 扉の方からその声が聞こえたと同時にセシルとアークの傷が癒えていった。 「オーナー!」 アークが叫んだ。 「遺跡だというので心配して来てみましたが、来ておいて正解ですね。」 「支援感謝する、さぁ、反撃と行こうか!」 「そうね、やられた分倍にして返しましょ。」 戦闘にレイヴンも加わり、みるみるうちにエネミーを一掃していった。 そして、一掃した後、広場の中央で三人息を切らしながら背中合わせに座り込んだ。 「ふぅ、レイヴンさんがおらんかったらあかんかったな…、おおきに。」 「そうね、アタシでもさすがに身の危険を感じたわ。有り難う、オーナー。」 「いえいえ、当然の事をしたまでです」 三人は激しい戦闘で疲れたのかしばらく黙り込んでいた。 そして、セシルが喋りだした。 「ん〜、アークさん、さっき戦闘前に俺のこと店に欲しいって言ってたよな?」 「ええ、言ったけど、それがどうかした?」 「もしよかったらでええんやけど、雇ってもらえへんやろか?」 「本当に?大歓迎よ、ね、オーナー。」 「はいな〜、歓迎しますよ〜。」 「おおきに!」 ー次の営業日ー 「あれ、あの人はあの時の…。」 赤いボディのアンドロイド、ワカがセシルを見て言った。 「あぁ、セシルね、あの人は今日から働いてもらうことになったのよ、みんな仲良くして頂戴ね。」 従業員一同がハイと答えると同時に営業時間になり、扉の方が開いた。 そして、今日もパイオニア2にあの声が響きわたる。 「いらっしゃいませ!クラブ「ノーチェ」にようこそ!」 -END- |